どういうときに精神科を受診したほうがいい?精神科の受診の目安は?

精神科の受診

こんにちわ。精神科医のさるです。

本日は精神科をどういうときに受診したほうがいいか、ということについて僕自身の考えをお伝えしようと思います。

世間で言われている精神科を受診する目安

精神科を受診する目安として、Googleで検索してみると色々な記載があります。

参考までに厚生労働省のWebサイトから受診する目安をご紹介します。

次のような気になる症状が続くときは、専門機関に相談しましょう

気分が沈む、憂うつ何をするのにも元気が出ない

イライラする、怒りっぽい

理由もないのに、不安な気持ちになる

気持ちが落ち着かない

胸がどきどきする、息苦しい

何度も確かめないと気がすまない

周りに誰もいないのに、人の声が聞こえてくる

誰かが自分の悪口を言っている

何も食べたくない、食事がおいしくない

なかなか寝つけない、熟睡できない

夜中に何度も目が覚める

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/first/first03_1.html

たしかにもっともなことが書かれていますが、上記のような症状があった場合、全ての人が精神科に受診したほうがいいのでしょうか。

クリニックに限定して話を進めますが、精神科を受診するにあたり、精神科でできることを知っておいたほうがいいと思います。

精神科クリニックでできること

精神科が提供できる医療と、患者さんが期待する医療に溝があると、患者さんは「精神科を受診したけど時間の無駄だった」「意味がなかった」と思ってしまいがちです。

特に、精神科クリニックの多くは新規の患者の受付を制限していることが多く、受診予約を取れるのが1ヶ月以上先など、そもそも受診のハードルが高い上に、それだけ待っても期待していたものと違うとなったら、期待はずれと思っても仕方がないかもしれません。

では、精神科でできる医療行為としてはどういうものがあるのでしょうか。

診断(検査を含む)

まずできることとして、今の患者さんの状態がどのような状態なのか、正常なのか病的なのかということも含めて診断をつけることができます。精神疾患の診断をつけるにあたり、内科的疾患がないかが前提になるので、血液検査や画像検査も実施することもありますが、医療機関により対応できる検査内容は異なります。また、心理検査で発達特性や知能指数などを調べることもできますが、臨床心理士が在籍しているかどうかで、実施できる医療機関は限られます。

ただ、精神科の、特に初診の診断については絶対的なものではなく、診察する医師によって診断名が異なったり、そもそも経過をみてみないと診断がつけられず、初診では判断がつかないこともあるので、参考程度に考えてください。そういう事情もあって、初診では診断名をはっきりと言わない精神科医も多いのですが、これについては、また別の記事で紹介できればと思います。

薬物療法

精神疾患に必ず薬が必要な疾患と、薬が必要ない疾患があります。必ず必要な場合は、精神科医もなんとか患者さんに薬を飲んでもらうように努力しますが、薬を飲んだら今の症状はとれるかもしれないけど、絶対に薬が必要かと言われたらそうではない患者さんには無理に薬をすすめません(少なくとも僕はそういうスタンスです)。

副作用が心配という患者さんは一定数おられますし、その気持ちは十分に理解できます。ただ、前提として副作用がない薬はありません。精神科の薬に限らず、どの薬にも副作用はあります。精神科の薬のイメージとして強いものとしては、依存性や離脱症状があってやめにくいとか、体重が増えるといったところでしょうか。事実、そういった性質の薬もありますが、そうでない薬も存在しますし、西洋薬がどうしても嫌という場合には漢方薬を処方することもあります。

環境調整

主に環境によるストレスが原因で、今の症状が引き起こされる場合や、今の精神症状では仕事に支障がでる場合は、休職や残業の制限を指示するような診断書を発行することは可能です。環境によるストレスが原因で症状が引き起こされている場合、薬がなしで症状が改善するケースが大半です。ただ、診断書については、職場や学校では比較的効果を発揮しますが、家族や友人関係ではあまり役にたたないことが多いです。

生活指導

診断がつけば、薬物療法以外の生活指導をしてもらうことは可能ですが、実際に役に立つことは少ないかもしれません。例えば、日本睡眠学会が発行している「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」というものがありますが、その中の生活指導の項目(適度な運動、寝室環境、規則正しい食生活、就寝前の水分、カフェイン、お酒、喫煙、考え事)を患者さんに伝えても、ピンとこないと思います。それができる気力があったら、精神科に受診してないというのが患者さんの本音でしょう。

カウンセリング

日本での精神科外来では大半は初診でも30分、再診でも5分程度になるので、医師によるカウンセリングをしているところは少ないです。医師による診察は主に、上記の「診断」「薬物療法」「環境調整」のための診察といってもいいでしょう。

それだからこそ、患者さんから医師が全然話を聞いてくれないという不平不満がでてきますし、ここが精神科医療における医療者と患者の最大の溝だと思います。これについては、別の記事を書こうと思いますが、しっかり話を聞いて欲しいと思う患者さんは、臨床心理士によるカウンセリングがおすすめです。保険診療内で30分から1時間程度、しっかり時間をかけて話を聞いてもらうことができます。

僕自身の診療スタイルとしては、診察できる時間が限られているからといって、臨床心理士の先生に丸投げするのはあまり好きではありません。できる限り、一人一人の患者さんに向き合い、しっかりと話を聞きたいと思って日々診療しています。だからといって、再診に毎回一人30分の時間をとれるかといったらそれは難しいので、長くても再診は10分程度でなんとか満足してもらえるように心がけていますが、実際にできているかどうかはわからないです。

福祉サービス

福祉サービスについてはあくまでも付属的なものになります。休職中に傷病手当の診断書が必要とか、通院費が負担が大きいから自立支援医療を申請するとか、働けないので障害者年金を申請しようとか、あくまでも通院を前提とした福祉サービスになるため、どこにも精神科を受診していない状態で、初診から福祉サービス目的で来院される方は少ないと思われます。

精神科を受診しなくてもよかった症例

例えば、以下のようなケースです(架空の症例です)。

30代女性。半年前に夫が不倫したことが発覚。夫は謝罪し、話し合いの結果、離婚はせずに婚姻関係は継続していくことになった。しかし、それ以来、不安感や気分の落ち込みが一日中続いており、仕事や家事も億劫で何もやる気がおきない状態が続いている。また食欲不振や不眠も出現してきた。このままじゃだめだと思い精神科クリニックを受診。血液検査を実施したが、明らかな異常はなし。心理検査では軽度のうつ状態と結果がでた。これまでの経緯を医師に話すと涙が出てきた。医師は一通り話を聞いて、何点か質問をしてから、うつ状態と診断を受けた。

医師から生活に支障がでているのであれば、抗うつ剤を内服したらどうかと提案を受けたが、抗うつ剤は絶対に飲みたくない。寝れないようであれば、生活リズムを整えるために睡眠薬を飲んだらどうかと言われたが睡眠薬も飲みたくない。比較的副作用の少ない漢方薬はどうかとも言われたが、漢方薬もなんとなく乗り気がしない。薬物療法をしないのであれば、臨床心理士によるカウンセリングを受けることも可能と言われたが、夫の不倫のことを誰かに言うこと自体ストレスになるので言いたくない。そもそも、今後、定期的に精神科に受診するつもりはない。医師からは夫としっかり話し合って、時間が解決すると言われたが、そんなことを聞きたくて精神科を受診したわけじゃない。

上記の症例は、困っている状態をなんとかしてほしいという一心で、精神科に受診してもらったと思うのですが、薬物療法やカウンセリングを希望しておらず、そもそも今後定期的に精神科を受診しないってことになると、患者さんの困りごとを解決することは非常に難しくなります。

薬物療法をするにしても、カウンセリングをするにしても、すぐに成果は出ませんし、定期的な受診が必要となります。また、家族間における環境調整については、虐待等の明らかな犯罪がない場合は医療が介入できるケースはありませんし、またそういった虐待等の犯罪が関わる場合、まずは役所や警察などの行政に相談すべきです。今、まさに精神的にしんどい状況であるという辛い気持ちは理解できるのですが、精神科クリニックのたった1回の受診で、問題がすべて解決できてハッピーになる、ということはまずあり得ません。

もちろん、それだけしんどい状況であるからこそ、医療者はなるべく寄り添った対応が必要になってくるわけですが、一部の精神科医には「精神科でできることはないから」「再診につながらないから」という理由で、軽くあしらわれるようなこともあるようです。実際に「精神科を受診したのに逆に傷つけられることを言われた」といったような患者さんの声も少なからずあります。

ただ、事前に精神科クリニックを受診する理由を明確にしておけば、このような悲劇は起きにくくなると思いますので、ぜひ精神科を受診する際には、上記に書いた精神科の役割を意識して受診してください。

精神科を受診してよかった症例

逆に精神科を受診してよかったケースはどのようなものでしょうか。それも具体的な症例を提示します(これも架空のものですが、よくあるケースです)。

20代男性。新卒で就職してから3年目。同僚からも信頼され任される仕事の量も増えてきた。しかし、最近は明らかに自分のキャパシティを超えて残業時間も月に80時間以上と増えている。ただ周りの期待には応えたい気持ちもあり、任された仕事は断りにくい。最近は仕事に行く前に腹痛が出現し、夜は途中で起きることも増えてきた。休みの日は少しはましになるが、仕事のことばかり考えてしまう。なんとかしたいと思い、精神科を受診。医師からは適応障害と診断を受けた。

ストレスを減らすことが重要と医師から言われたが、それができたら苦労しない。医師からは「精神科にかかって適応障害と診断を受けたと上司に相談してみてはどうか。自分から言いにくいのであれば、休職もしくは残業時間を減らすように医師から言われたと伝えてもらってもいい。必要であれば診断書を書く。」と言われたので、それをそのまま上司に相談したところ、「業務量のコントロールができておらず申し訳なかった」と言われ、翌日から休職となった。休職中には傷病手当の手続きもした。休職後、薬を飲むことなしにすぐに症状は消失し、1ヶ月後、残業時間を制限しながら職場復帰となった。

精神科を受診する前に上司に相談すれば解決できていたのかもしれませんが、精神科の受診を通じて、診断書を書いてもらいスムーズに休職に至ることができた症例になります。精神科のできることの中のひとつの環境調整が功を奏したパターンですね。

まとめ

僕自身の考えをまとめます。自分で自ら受診する場合、精神的な症状に加えて、精神科でできる診断(検査を含む)、薬物療法、環境調整、生活指導、カウンセリング、福祉サービスを希望するのであれば、受診をおすすめします。ただ、精神的には困っているけど、こういった治療は希望せずに継続的な通院もしないのであれば、そのお困りごとを解決するのは難しいと思います。

この記事を読んで少しでもうまく精神科クリニックを受診できるようになる患者さんが増えたら幸いです。

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